| 香港就職体験記A 出勤第一日目 前回、気軽な気持ちで就職体験記を記したのだが、本人の意に反して以外に反響があり続編をはやく!というくらい期待されてしまった。こうなれば「豚もおだてりゃなんとか」という気持ちで、続きを書くしかない。ということで、あくまでも、一個人の体験記として読んでいって下さい。 就職にあたり、なにを最優先するかは個人の問題であるが、それでも報酬に関しては、誰でも気にかかる重要なポイントであろう。ご存知のように、香港は大変家賃が高い!もし、私が単身で香港に乗り込んできたとすれば、1人マンションを借りて生活すると、完全な「持ち出し」となる。よって、部屋をシェアするとか、寮の制度のある会社を選ぶとかというパターンが一般的である。幸い、私に関しては、夫の会社(このころは駐在員でした)の方で85%負担してくれるので、あまりギチギチせずに給料交渉を終えた。しかし、恥をしのんで記すとすれば、交渉の結果は、私の当初の要求のほぼ半分であった。まだ語学力もないし、経験もないということで、謙虚して要求したにも関わらず、この結果である。会社側とすれば、「最初に入社した外国人」ということで「外国人特別手当」をつけたのだから、破格な給料だという。さらに「日本人の平均給料を香港ドルに換算して考えてはいけない。ここは香港であるから、そのような計算方法で基準にしても全く参考にはならない。日本の給与が高すぎるのである。現に香港人のローカルスタッフは、もっと低いのだ。そしてあなたは入社後、絶対に自分の給料を他人に口外してはならない。あなたの給料は特別であるから」とまで言われると、イエスと言わざるを得なくなった。中国人の交渉力のうまさにのせられたのかナという気がしないでもないが、プロ野球選手の契約更改後のインタビューを見る度に、なぜか今もこの交渉が思い出される。 さて、記念すべき初出勤日は、連休(イースター)明けの4月6日であった。香港は3月から、モワァっとした湿気と熱気が立ちこめてくる。4月ともなれば汗が吹き出る長い夏の始まりなのだが、デリケートな私は、この日は人一倍汗をかいて出勤した。部長からおおまかな業務の説明を受けた後、自己紹介を兼ねてお昼の飲茶へ日本部全員(部長を含めて8人)で繰り出す。 香港のランチタイムは午後1時から2時である。なぜ、1時からなのか由来はわからないが、とにかく慣習となっており、この時間はどこも人であふれかえる。パッケージ旅行での飲茶では、この時間帯をはずして設定されているし、周囲も旅行社ばかりだかこそ静かに楽しむことが可能なのだが、ヂモティばかりではそうばかりではそうはいかない。ツバキを飛ばしてしゃべりまくるオヤジが後ろのテーブルがいるという位置で、自己紹介されても悲しいかな「聞こえない」のである。さらに本名のほかにEnglish Nameが加わるのである。これでは、覚えられない!初日の昼食時に全員の顔と名前ぐらいは一致させてしまおうという私の当初のもくろみは、あっさりと断念されてしまった。 ここで、English Nameについて触れる。香港の若い世代はほとんどこの名前を持っている。いわばニックネームみたいなものだが、名刺にもきちんとプリントされるオフィシャルなものなのである。私が仕事上、よくつきあった人のものは女性でPinky,Candy,Nichol,Ling,Lora,Issabella,Michelle,男性でSanny,Dick,Stephen,Poleであった。やはり、初めはこのEnglish Nameというのは面食らうものである。顔は完全に香港人なのだから。なぜ、English Nameが必要なのかというと、よくいえば国際的に通用するからといえる。中国人や香港人の通常の姓は一文字だが、発音が同じでもいろいろ漢字はある。同じ漢字圏だったら説明はしやすいのだが、漢字を理解しない人にとっては区別がつかない。よって、アルファベットで表記も簡単、しかも発音もわかりやすいというEnglish Nameが登場してくるのである。慣れてくれば、大変便利なものである。名刺では、「English name,姓」の形で記される。香港のスーパースターのジャッキー・チェンはJacky 成であり、アグネス・チャンはAgness 陳である。近頃は、広州の店員の名札にも見かけられるようになった。こちらは、おしゃれ感覚で取り入られているのであろう。私も、まずはEnglish Nameを作るようにと周りからいわれた。そして、Dianaというまさにイメージにふさわしいものを、ひそかに用意しておいたのだが、やはり恥かしさには勝てずにYamakawa-sanで通した。在港日本人もだいたい、この恥かしさに打ち勝てる人はいないようで、名前か姓をそのまま使っている。 公用語に英語があるとはいえ、香港人の英語の発音は少し変わっている。これを知らずにいると、困る場合もある。千津さんという女性がChizuと使っていたのだが、これを香港人が発音すると「チィーシィ」となり広東語のスラングの「チィーシン」という大変ポピュラー、かつあまり良ろしくない言葉に極似しているので、笑われていたケースがあった。これなどは、香港風の発音を知らずにつけてしまったためにおこるケースである。和製英語ならぬ香港製英語というのも名前では登場する。明らかに日本語の「好き」からきているSukiという名前の人は、私の知っている女性で二人いる。ただし、香港風発音では「シュウキィ」となるのだが。ずっと使っていくなまえにしては、意外に適当に付けられていて、中学校の先生がふとした思いつきで付けたという場合もある。一番多いのは、自分の名前や漢字の発音にちなんでいるもので、「月」という字があれば、Moonとつけたり、発音が似ているものを探してきたりといろいろである。その人のEnglish Nameの由来を想像するだけで、結構楽しいものだ。 私の記念すべき出勤1日目はこんな風に過ぎた。後日談で、私が出勤する前に部長が会議の中で「4月から日本人が入るので、お行儀を良くしなさい」とのお達しがあったと、同僚が笑って話してくれた。なにがなんだかわからない風に1日が終わったが、帰宅すると緊張がほどけて、どっと疲れが出てきた。1日中座ったままでデスクワークするというの初めての経験に加えて、香港の鳥肌が出るほどのオフィスクーラーに慣れていなかったこともあり、恥ずかしながらひどく腰痛になってしまっていた。 |
| 香港体験記3・からだを張った接待へススム |